僕の祖父母の家は京都の丹後地方にあります。 今は合併を重ねて京丹後市なんてそっけない名称になってますが。
夜は本当に真っ暗になるほどのド田舎なのですが、その家の縁側から見る風景が、ぼくはとてつもなく好きなのです。
縁側に座って、前を見るともなしに見る。 一番前は家の庭なんですが、視界のちょうど両サイドに柿の木が一本ずつ生えています。
ちなみに、この柿の木では色々な自然の“現象”を見ました。 蛇の脱皮やら、蝉が蜂に刺されてるのやら。
その柿の木の向こうには物干し台が置いてあって、その向こうがトマト、ピーマン、スイカなんかが採れる家の畑。 そこから地面が下って、視界外の手前からバーッと田圃が拡がっていて、その田圃の中を横に一本、道路がスーッと走っています。 一番奥に山が座っていて、その上が青空。
大体、この家に行くのが夏休み中だったので、ボーッと見ていると、視界の中で色々なことが展開されてました。
蝉やアゲハチョウが飛んでくる、オニヤンマが横切る、イタチが畑を駆ける、空ではトンビが回る……。
生き物が好きだった少年時代のぼくは、飽きずにずっと見ていました。
この、ぼくにとって多分にノスタルジックな風景を、久しく見ていません。 最後に見たのは25年ほど前だったでしょうか。 若い頃は遊びに、最近は仕事などに忙しく、遠く離れている身ではなかなか行くことが出来ないでいます。 経済的な理由もあるけれども。
しかし、この風景、聞いたらほぼ変わらずに残っているらしい。 家庭を持ち、子供が出来た今、ぼくは家族にこの風景を見せたいと思っています。 何より、ぼくがもう一度見たい。 大人になって忘れていることを思い出せるのではないか、そんな期待も持っていたりします。
きっと人には誰にもこのような自分にとっての大切な風景があるのではないでしょうか。 たまには思い出して一休みしてはいかが?