城(グスク)を見る。
先日沖縄旅行に行きましたが、ぼくのメインがこれでした。
琉球のころの面影を色濃く残すグスクは、かなりユニークです。琉球は日本とは違う国だったわけですから、その文化も違います。もちろん、お城だって違ってくるのは当たり前ですよね。その違いを、実際に目で見て肌で感じたいと思うのは、歴史好きなら当たり前です。
しかも今回見て回ったうち、いくつかは2000年に登録された世界遺産、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一部です。つまり、世界遺産を巡ることにもなります。そりゃテンション上がるでしょう?めっちゃ楽しかったですよ!
渾身の城(グスク)めぐりの旅!
ちなみに、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成しているのは9つの史跡。今帰仁村の「今帰仁城跡(なきじんじょうあと)」、読谷村の「座喜味城跡(ざきみじょうあと)」、うるま市の「勝連城跡(かつれんじょうあと)」、北中城村の「中城城跡(なかぐすくじょうあと)」、那覇市の「首里城跡(しゅりじょうあと)」や「園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)」、「玉陵(たまうどぅん)」、「識名園(しきなえん)」、南城市の「斎場御嶽(せーふぁうたき)」。
本当は、これをすべて巡るほうがこのブログのネタとしてもいいんですけど、あくまでもぼくが見たいと強く思っているのはグスクのみ(もちろん他も見たいけど)。
そこで、今回見て回ったのは順番で言うと座喜味城跡、勝連城跡、中城城跡、玉城城跡(たまぐすくじょうあと)、糸数城跡(いとかずじょうあと)、具志川城跡(ぐしかわじょうあと)、首里城跡の7つの城(グスク)となります。今帰仁城跡も見たかったんですが、他と比べてあまりにも北に離れているので今回は省きました。これで那覇市内のホテルからレンタカーで出発して沖縄本島の南半分をグルっと一周するカンジで見て回ることができるんですよね。
ぼくが練りに練ったコースですが、前日に朝の4時まで飲んでたことが災いして寝坊し、出発が遅れたために昼メシ抜きの強行軍になったことは反省します(笑)。
それでは、ぼくが撮ってきた写真とともに、城(グスク)めぐりの旅を振り返ってみたいと思います。
座喜味城跡(ざきみじょうあと)
最初に向かったのが座喜味城跡。
城壁の跡の近くまで車で行けます。車を降りるとすぐそこにあります。そしてまっすぐの坂道を登っていくと(けっこうしんどい)、城壁が見えてきました。
もっと近づいていくとこう。
これです、この門というか出入口が沖縄の城(グスク)の特徴です。パッと見ヨーロッパの城塞のようなカンジですよね。石垣がそのまま城壁になったようなカンジ。
中に入ると建物跡がありました。
右奥に階段が見えますが、これを登ると、なんと城壁の上に立つことができるのです!
そこから見える景色をどうぞ。
海が見えるのはいいですね。かなり気持ち良かったです。
ちなみに、初めて沖縄のグスクを訪れてひとつだけ疑問が生まれたのです。石垣について。キレイに積んでありますが、近くで見るとこんなカンジ。
なんか柔らかいカンジで、あちこちが朽ちてて、植物なんかも生えちゃってる。
「なにこれ?」と思ったわけですが、ひとつの仮説がぼくに生まれました。
「もしかしてこれ珊瑚?」
しかし、珊瑚をこんなふうに加工してふんだんに使うなんて、普通は考えられない。この疑問は、実は次の次に訪れた中城城跡で晴れることになるのですが、ここでは頭にクエスチョンマークを付けたまま次の勝連城に向かうことにしました。
勝連城跡(かつれんじょうあと)
というわけで次の勝連城。
ここは、ひょんなことからGoogleマップで見つけて以来、絶対に訪れたい史跡でした。今回も、たとえ他は行けなくともここだけは絶対に行く!と思っていたグスクです。
その理由は、見ていただければわかるでしょう。
どうぞ。
スゲー!
もう、実際に声出ちゃいましたからね、「スゲー!!!」って。
一番上の本丸までハッキリクッキリ城壁が残ってるのはここくらいです。そしてやっぱりヨーロッパの要塞っぽい。
しかし、この景色を堪能するまでに、すでに随分と坂道を登ってきてます。正直、「スゲーけどハァハァ…今からまたハァハァハァ…あれ登るの?ハァハァハァ……」ってなってました。しかし、登るしかない。
その前に、一番左に見える一番要塞に見える部分を見てみたい…となって歩いてみました。
うわあ!カッコ良すぎる!よし、登るぞ!元気をありがとう!
そしてエッチラオッチラ登っていくと、いわゆる二の丸。
階段があって上がったところに建物が建ってたらしいんですけど、そこにはもちろん柱のあとが。
この柱の数を見ると、どれだけ頑丈に作られたかが分かります。おそらく、ここまで攻め上がってこられても、ある程度時間を稼げるようになってたんでしょう。推測ですが。
そしていよいよ本丸へ。もうこれ登山やんけハァハァ……。
登山の疲れも吹っ飛ぶ絶景でした!
この景色でホッとしちゃって写真撮るのを忘れてたんですが、階段が徐々に細くなっていってて守りやすいようになってるのは面白かったですね。この勝連城の防衛意識は高く、かなり堅い城だったんじゃないかなぁと思いました。最初の写真を思い出してほしいんですけど、この蛇行した登り口。
守る側は、常に攻め手の横を衝くことができますよね。攻める側は常に横から矢なり石なりを受けたはずです。しかも登って登って疲れてるときにそれですからね。こんなの攻め落とすのに守り側の何倍の兵を要したんでしょうか。
ぼくは、城を見るときはもし自分が攻めるならどう攻めるかを考えながら見ることが多いんですが、この城は落とせませんでした。しんどすぎます。
というわけで退却となるわけですが、降りる方がしんどいですよまったくハァハァ…てなカンジでした。
ここでかなり体力を消耗したぼくは、「これは何か所も回るとか考えてたけど甘かったと言わざるを得ない。ガチで守るための山城だからみんな登山。これもう登山。もうホテル帰りたい」と少し自分の計画に後悔しました。
しかし「グスクめぐりは今回の旅行のぼくの使命!次いつ来れるかわからない!もしかしたら来れないかもしれない!」と思い立ち、計画の続行を決定、「食べたら吐くかもしれないから昼メシ抜きで絶対全部回ろう!」と決意を新たにしたのでした。
ちなみに、勝連城の全貌がわかる模型もありましたよ。
いや、これ陥落させれないでしょ…。
よし!次じゃ!次の中城城跡に向かうのじゃー!
中城城跡(なかぐすくじょうあと)
勝連城でクタクタになった体に鞭打ってやってきた中城城跡。ぼくらを待っていたのは400円のお支払いでした。
この中城城跡は、かなり大規模なグスクで東西に滅茶苦茶長いので本丸まで登って行ってまた戻ってくるのはかなり体力を消耗するのです。だからカートで一番奥まで乗っけて行ってもらって片道だけですべてを堪能するシステム。つまり400円ってのはこのカートの乗車賃なんでしょうね。
というわけで、一番奥である中城城の本丸の跡を裏から見るかたちからスタートです。城は攻め上る視点で楽しむのが常だったぼくにとってはなんだか新鮮です。
裏からだと一発で攻められて終わりになるんじゃないかと思ってたんですけど、さすがに断崖絶壁すぎてその心配は少なそうですね。しかし、出入口はあるんですよね。
入ってから振り返るとこう。
ここで気づいたんですが、ここまで見てきた座喜味城や勝連城と比べると、風化が著しい。海からの風がかなり強い場所なのでそれでかな、と思ったんですが、だとしたらその風って琉球王国のころから変わってないってことですから、それはそれで風の感じ方も変わってきますよね。楽しい。
楽しみつつ進んでいきます。
この出入口を抜けると、両脇に石が並んでました。
左右に並ぶ石は崩れてしまった石垣を形成する石で、復元する予定だそうですが、なかなか進んでないみたい。説明に期限が書いてあったんですけど、とっくに過ぎてました。いつか必ず復元していただきたいものです。
さて、中城城は特定の場所では城壁に登ることができます。そこからの景色も絶景です。
とにかく中城城は大きくて、建物の跡もデカいです。かなり迫力のある建物が建ってたんじゃないでしょうか。逆光ですけど。
中城城の全貌模型もありました。
ぼくらが歩いたのは左側からです。降りていくカンジですね。
さて、次。
かなりもう疲れてますが、テンションは上がってきました。グスクハイ状態です。そんなアゲアゲ状態のまま次の玉城城跡に向かいます。
玉城城跡(たまぐすくじょうあと)
玉城城跡についてまず思ったのは「ずいぶんと寂れてるな…」ということです。今までの座喜味城、勝連城、中城城とは明らかに違います。
積まれた石垣も崩れまくって歩ける状態じゃない。しかしやっぱり山の上。
危ないので木製の階段が設けられています。ていうか、これを登るのかよ!
ヒーヒー言いながら登り切ると、やっぱり寂れている。
逆光なのでくぐってから同じ場所をパチリ。
うん、崩れそうだ…。
そして、中を見てみると草ボーボー。
しかしやっぱり、山の上からの景色はキレイ。
なんでこんなに寂れてるのかと考えてみるに、今まで見てきた座喜味城と勝連城と中城城は世界遺産を構成する史跡で、この玉城城は違うからなんでしょう。やっぱり管理の行き届き方が違うんでしょうねぇ。
これはこれで趣があって悪くないんですけど、何とかならんものか…なんてことを考えつつ次の糸数城へ。
糸数城跡(いとかずじょうあと)
玉城城跡と糸数城跡は近くて1本の道路でつながっています。その道路は「グスクロード」なんて名付けられているらしいんですけど。
行ってみると、すぐ近くまで車で登っていけました。やった!登山しなくていいぞ!
しかしこちらも玉城城に負けず劣らず寂れている…。
「アブねぇから登るなよ!」なんて看板があちこちにあったりします。
それでも奥のほうにはきっちりと形状を残している部分もあったりして。
世界遺産に入っているグスクもいいんですけど、玉城城やこの糸数城みたいなのも本当に良い。なんと言うか、正に「兵どもが夢の跡」って感じなんですよね。
ここを拠点に夢見た男たちがかつて居たんだ、と思うと来てよかったと思いますよ。
なんて感傷に浸りながら、次の具志川城跡へ。
具志川城跡(ぐしかわじょうあと)
この具志川城跡は今までの城とは一味違います。なんと、完全に海っぺりの崖の上に築かれているのです。本当の先っぽなので、一番奥は三方が海。
守るにしても後がない、かなり覚悟を決めたお城ですね。どこを見てもその肝の座りっぷりがよくわかるカンジです。
逆に先っぽから振り返ってみた景色がこう。
「全ての曲輪を攻め取った敵が前方から殺到してくる、うしろは海」という絶望を感じることができます。うわぁ、やだやだ。
さて、そんな絶望を感じ、またずっとメシを食ってないので空腹度もピークに近くなりつつ、最終目的地である首里城へ向かうこととしましょう。
首里城(しゅりじょう)
首里城と言えば沖縄で1、2を争う観光スポットですから知らない人はいないと思いますが、こうやって1日グスクを回ってきてから見ると、ラスボス感がハンパねぇ!
首里城はかなり広くて多くの展示物が展示されているので、史跡というより博物館みたいになっています。それらをジックリ見てちょうど見終わったころにシャッターチャンスが!
首里城に沈む夕日ですよ。
やっぱりスマホだとダメですね。目で見る赤さが全然出てません。こういうときにカメラが趣味の人はいい写真を撮るんでしょうねぇ…。
まぁそれはさておき、この夕日にてこの日の「沖縄グスクめぐりの旅」は終わりとなります。昼メシを抜いたおかげで7つのグスクを見ることができました。
もちろん、夜は空腹のまま国際通りに繰り出し、同行した2人の同僚とドンチャン騒ぎでしたけども。
最後に
色んな城(グスク)を見て回ったんですけど、やっぱり首里城は違いますよね。平時の城というか。王の権威を見せつけるための城というか。だから正直言うと城としては楽しくない。申し訳ないけど。
その点、やっぱり防衛の拠点としての城は見てて面白い。
勝連城なんかは、攻め手としても守り手としても想像しながら見ると滅茶苦茶楽しかったですよ。勝連城と中城城は攻めて落とすことはとても難しかったんじゃないでしょうか。少なくともぼくが「あれ落としてこい」と言われたら「無理!」としか言いようがないですもん。
そういうのも、実際に見ないとわからないですからね、非常に今回の旅は有意義でした。「そんなもん見てわかってどうするねん」と思わない人はぼくと同じようにグスクを巡ってみてください。
ぼくも今度は琉球王国の歴史を少しは学んでから回ってみようと思います。