「赤チン」と聞いて「ああアレね」と分かる人は間違いなく昭和生まれでしょう。映画『三丁目の夕日』やアニメ『ちびまる子ちゃん』にも登場するので、昭和生まれじゃなくってもその存在は知っている人はいるでしょうけども。
その赤チンが、無くなってしまう。
今でも製造している最後の1社三栄製薬が、製造を終了するそうな。
赤チンとは
赤チンは、皮膚の殺菌・消毒するための消毒液です。
殺菌剤であるメルブロミンの水溶液で、赤褐色をしていることから赤チンと呼ばれました。赤チンは「赤いヨードチンキ」の略で、同じく消毒剤のヨードチンキ(ヨーチン)に対して赤いので「赤チン」と呼ばれるようになりました。ちなみに、ライバル商品であるマキロンは「白チン」って呼ばれてましたよね。
ヨードチンキに比べて染みずに痛くないことから家庭や学校の保健室に普及し、日本中が「切り傷や擦り傷ができたらまず何はなくとも赤チン」といった雰囲気。
活発な子供の膝は赤チンのせいで常に赤く染まっていましたよね。
しかし、原材料のマーキュロクロムを製造するときに水銀が発生することから国内で原材料の製造がなくなり、赤チンを製造する会社はドンドン減っていきました。
そして、水銀を使用した製品の製造、輸出入を規制する国際条約「水俣条約」で、赤チンも2021年から規制対象になることから最後の製造会社である三栄製薬も製造を終了することになりました。
両親が赤チン信者だった
で、ぼくが子供のころは、ご多分に漏れず家には赤チンが常備されていました。
ぼくらは毎日毎日外を飛び回って遊んでいましたから、擦り傷切り傷なんて当たり前。キズだらけのぼくが夕方帰ると玄関まで来た母が「あらまぁ!赤チン赤チン!」といって救急箱を持ってきて赤チンを取り出し、キズに塗ってくれるのが常でした。
カッターでスカっと指を切っちゃっても赤チン、蚊に刺されて掻きすぎて血が滲んできても赤チン、そんな具合です。母は赤チンを盲信していました。そして、赤チンは母の温もりでした。
その盲信具合は親父のほうがヒドくて、「これくらいのキズなら大丈夫」とオカンが赤チンを塗らないと判断したときも「アホかキズには赤チン。赤チンを塗れ」といった具合で、親父が休みの日にキズを作って帰ろうもんなら身体中が真っ赤に染まる勢いでした。
しかし、赤チンで赤くなった身体というのは子供の証みたいなもんですから、親父がいかに盲信していても自分のキズに赤チンを塗るということはしませんでした。指を赤チンで赤くしたオッサンなんか見れたもんじゃないですからね。
しかし、ひとつだけ親父が気がねなく赤チンを塗りまくったところがあります。
それは、口の中。
親父は口の中に口内炎ができると躊躇なくそこに赤チンを塗ってました。口の中に赤チンを!今考えると、若干不衛生ですな。
しかし、それほど赤チンというのは当時大活躍していたのです。まぁ、どの家庭も似たようなもんだったんじゃないでしょうか。
最後に
そんな赤チンの製造が終了してしまう。
子供のころの記憶が赤チンとともにあった世代としては、ちょっと寂しいものがありますね。
しかしこれも時代の流れ。仕方のないことではありますが。
さようなら、赤チン!