国土交通省による「住宅ストック循環支援事業」が割と話題になっていますね。これは、数が多くなっている既存住宅のストック(空き家)を減らすために、住宅購入を考えている人が中古物件を購入してエコリフォームしやすくなるように補助金を交付する仕組みです。
2016年10月11日に成立した第2次補正予算を受けて実施されることになったのですが、不動産仲介営業のぼくにもお客さんから多くの問い合わせが来ました。
そこで、調べてみたことをここにまとめようと思います。
もし、これから中古住宅を買おうと思ってるなら重要です!
目次
「住宅ストック循環支援事業」って?
低い水準の既存住宅流通
「住宅ストック循環支援事業」とは、住宅のエコリフォーム、そして良質な既存住宅の購入とエコ住宅への建替えを対象に実施される制度です。
日本の既存住宅流通は他国とくらべても極めて低い水準です(アメリカ83.1%に対し日本は14.7%)。これが拡大してくると経済効果はもちろんありますし、住替えによる豊かな住生活の実現などにも意義が出てきます。だからそこを何とかするべくこういった制度が生まれたわけですね。空き家を減らしたいんですな。
補助対象
「住宅ストック循環支援事業」は“若者による既存住宅の購入”における、インスペクションとエコリフォームに対して補助します。
具体的に対象となる住宅は以下の3つの要件を満たしている住宅ということになります。
①若者が、自らが居住する住宅として購入する既存住宅であること
②インスペクションが実施されていて、既存住宅売買瑕疵保険が付保されている住宅であること
③補正予算成立日(2016年10月11日)以降に売買契約が締結され、事業者登録日以降に引き渡しを受ける既存住宅であること
これらをすべて満たす既存住宅が補助されるんですね。ちなみに予算は250億円だそうです。
この制度における若者
この制度における「若者」とは、第2次補正予算成立時(2016年10月11日)に40歳未満の人。購入時に住民票にて確認されます。
日本の場合、この世代は注文住宅、分譲住宅を購入する率は高いけど、中古買ってリフォームする人が少ないため。
インスペクションとは
建築士が行う、「既存住宅インスペクションガイドライン」に沿って実施された既存住宅の現況調査のことです。
既存住宅売買瑕疵保険とは
国土交通大臣が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人が扱う既存住宅売買瑕疵保険のこと。
耐震性を有している住宅が対象となりますが、耐震性を有しない住宅を購入した場合、引き渡しの後に自分で耐震改修をしてリフォーム型既存住宅売買瑕疵保険に加入しなければ制度の対象となりません。
補助額
では、この制度を利用すると、具体的にどれくらい補助金が出るのかというと、まずインスペクション実施して瑕疵保険を付帯すれば保険料を含めて一律5万円が交付されます。
そして、エコリフォームを実施すれば工事内容に定められた額(下に記載)に応じて補助額が交付されます。
①開口部の断熱改修
ガラス交換、内窓設置、外窓交換、ドア交換で3000円~25000円/箇所
②外壁の断熱改修、屋根・天井の断熱改修、床の断熱改修
住宅の建て方、断熱材の区分に応じて定める断熱材使用量以上のもの。
外壁…120000円(60000円)
屋根・天井…36000円(18000)円
床…60000円(30000円)
( )内は部分断熱の場合。
③設備エコ改修(5種類のうち3種類を設置する)
太陽熱利用システム、節水型トイレ、高断熱浴槽、高効率給湯機、節湯水栓で各24000円、節湯水栓のみ3000円
④併せて対象とするリフォーム等(各項目1箇所のみ対象)
バリアフリー改修
手すり設置…6000円
段差解消…6000円
廊下幅等の拡張…30000円
エコ住宅設備の設置
設備エコ改修のうち1種類~2種類の場合、設備エコ改修と同じ額
木造住宅の劣化対策工事
小屋裏換気口設置…8000円
小屋裏点検口設置…3000円
浴室ユニットバス設置…30000円
脱衣室の耐水性仕上げ…8000円
外壁の軸組等及び土台の防腐防蟻措置…20000円
土間コンクリート打設…120000円
床下点検口設置…3000円
耐震改修(1戸あたり)
150000円
リフォーム瑕疵保険(1契約あたり)
リフォーム瑕疵保険への加入…10000円
(一覧掲載元:住宅のエコリフォーム|住宅ストック循環支援事業補助金)
補助金を受けるには、上記表の①~③のどれかひとつは必須で、さらに合計が5万円以上必要です。①②③と併せて工事をする場合に限り④の工事も対象になります。
エコリフォームの補助限度額は30万円、耐震工事を伴うと45万円です。
なお、国の他の補助制度との併用はできません。
申請期限など
工事着手(請負契約) 予算成立日(平成28年10月11日)と事業者登録を行った日のいずれか遅い日以降
工事完了 上記の工事着手日~遅くとも平成29年12月31日
事業者登録 平成28年11月1日~平成29年3月31日
補助金交付申請 平成29年1月18日(予定)~遅くとも平成29年6月30日
完了報告 遅くとも平成29年12月31日まで
補助金の交付申請が6月30日なので、中古を購入してリフォームするつもりならば、今くらいにいい物件を見つけて購入しないと間に合わないかも知れません(リフォーム工事の規模にもよりますが)。
それよりも、宅地建物取引業者がいったん買い取ってエコリフォームを実施した既存住宅を購入するほうがスケジュール的には余裕がありますが、その場合数が限られてきます(それでもたくさんありますが)。
手続き
この補助金の交付手続きは事業者に限定されます。購入者が自分で手続きして直接補助金をもらうというカタチではないので注意してください。
宅建業者が購入してエコリフォームを施して売りに出した家を買う場合、その売主である宅建業者が交付申請手続きをして交付され、それを購入者に還元するということになります。
リフォームを必要としないキレイな中古物件を購入した場合はインスペクションを実施した場合に限りそのインスペクション事業者が申請手続きをして購入者に還元します。
※つまり、キレイな中古物件を購入してリフォームしない場合、この制度の補助金としてはインスペクション分の5万円しか交付されません。当たり前ですけどエコリフォーム分はナシ。この辺も注意が必要ですよ。
まとめ
・「住宅ストック循環支援事業」とは、住宅のエコリフォーム、そして良質な既存住宅の購入とエコ住宅への建替えを対象に実施される制度
・それにより、良質な既存住宅を増やし、空き家を減らすのが狙い
・「若者」が対象。若者の中古購入率、リフォーム率が低いため
・インスペクションが実施され、既存住宅売買瑕疵保険が付保されている建物が対象
・インスペクション分は一律5万円の補助
・エコリフォーム分は工事内容に応じた額が補助される。最大30万円、耐震工事を入れると45万円
・国の他の補助制度との併用は不可
・申請手続きは事業者が行う。そののち、交付された補助金を買主に還元する
詳しくは、国土交通省の「住宅ストック循環支援事業補助金」のページを見たほうがいいと思うやつ。
最後に
いきなり問い合わせが来たのでビックリして急いで調べたことを書きました。また何かわかれば随時追記していきますね。
冒頭にも書きましたが、今住宅を探してる人、これから探そうかなと思ってる人は覚えておいて損はないと思います。