2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公、明智光秀。
本能寺の変を起こした張本人なので悪人というイメージが強かったけど、戦国武将なのに教養があったりして最近では再評価されてるようなカンジがします。まぁ、さまざまな説があるんですけどね。
(画像掲載元:ファイル:Akechi Mituhide.jpg - Wikipedia)
今回は、戦国時代に日本に実際に居た外国人宣教師ルイス・フロイスが著した『日本史』という史料から明智光秀を紐解いてみたい。
結構ヒドいのよ。
ルイス・フロイス『日本史』
ルイス・フロイスはポルトガルのカトリック司祭で、イエズス会宣教師として日本で布教活動をしていた人物です。秀吉のバテレン追放令後も日本に滞在していてずっと執筆活動をしていました。のちのキリスト教布教に赴く宣教師のため、日本の布教活動をまとめるという指令がフロイスにはあったようですね。そうやって書かれたのが『日本史』です。
当然キリスト教的な偏見、そして誤解や間違いが見受けられるものの、当時の日本を知る史料としては一級品だと言っていいでしょう。人物名や地名の読み方なんかは、『日本史』のローマ字表記から「こうやって読むのか」とわかったりしましたからね。
戦国時代に興味があるなら、目を通しておかなければならない歴史書、それが『日本史』です。
『日本史』の中の明智光秀
さて、『日本史』には布教活動の内容だけでなく、信長や秀吉や武田信玄、大友宗麟など数々の戦国大名、武将の人物評が書かれています。
その中に明智光秀の名前もあるんですが、これがまぁボロカスに書かれてたりするんですよね。
『完訳フロイス日本史』から拾い上げてみた明智光秀がコチラ。
- 才略、思慮、狡猾さを持っている。
- 全ての者から快く思われていなかった。
- 裏切りや密会を好む。
- 刑を科するに残酷。
- 己を偽装するのに抜け目がない。
- 戦争においては謀略を得意とする。
- 信長の情に訴えるために信長を調べ上げ、必要ならば面前で涙も流す。
- 人を欺ぬための72の心得を体得していると周囲に自慢する。
うーん、ヒドい。「なんだコイツ!」と思わずにはいられません。
「人を騙して出世して人と騙して合戦にも勝つ。そのためにはなんだってする!」みたい腹黒いイヤなやつです。
また、光秀が信長に足蹴にされたという有名な事件、本能寺の要因のひとつとされるアレなんですけど、あれもフロイスによると信長と光秀が2人だけのときの事件だそうで、もしかしたら光秀が自分でみんなに吹聴してのちに「みんなの前で足蹴にした」ということになっていったのかもしれません。
なんてやつだ!
フロイスの記述の信憑性
さて、「マジかよ!」と思わざるを得ないフロイスの光秀評なんですが、そもそも「これホントかいな?」という問題もあります。まぁ、史料というものは全てそんなカンジですけど。だから検証が大事なんですけどね。
もちろん、『日本史』にフロイスの主観や偏見、私情なんかがいたるところに挟まっているのは当然ですよね。
こんな記述があります。
明智は悪魔とその偶像の大いなる友であり、我らに対してはいたって冷淡であるばかりか悪意をさえ抱いており、デウスのことについてなんの愛情も有していないことが判明していた
これ大事ですよね。
光秀は悪魔を崇拝してた、デウスの敵だと書いてるわけですが、つまりはキリスト教に好意的じゃないからこういう風に書いてるんですね。秀吉については暴君扱いで信長や宗麟、龍造寺隆信でさえベタ褒めしてるところと合わせてみると、要はキリスト教に寛大じゃない人に対しては酷評してるんです。光秀はその最たるものかもしれません。
しかしだからといって「フロイスは嘘を言ってる」とは思いません。フロイスには、キリスト教を通して将来日本を植民地にするための「内情調査」の役割もあったはずですから。だとしたら誇張はあるにせよ割と正確に書いてると思うんですよね。
すくなくとも、かなりしたたかな武将だったのは間違いないんじゃないでしょうか。
最後に
あくまでもルイス・フロイスが書いたものだけで見てるだけです。他の史料も色々見ないと正確な全体像なんて出てきません。
『日本史』だけで光秀のことを嫌いにならないでください!腹黒いけど!