なにやら、カプコンの人気ゲームシリーズ『戦国BASARA』の新作がスマホで登場するらしいです。『戦国BASARAバトルパーティー』っていうらしいですね。
「#戦国BASARA 」シリーズの最新作がスマホアプリで登場‼
— 戦国BASARA バトルパーティー公式 (@basara_bp) 2019年5月14日
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ところで、このゲームタイトルに使われている「ばさら」って何かご存知でしょうか。
実は大学でぼくはこの「ばさら」を研究テーマとしていたので、かいつまんで書いてみようと思います(ただし中退)。
「ばさら」とは
「ばさら」というのは、主に日本の南北朝時代に流行していた風潮を表す言葉で、その時代を描いた書物『太平記』にも頻繁に出てきて、「婆娑羅」と漢字表記されることもあります。実際当時の流行語だったみたいですね。そのころに流行語大賞があったら大賞を受賞するレベルです。
身分秩序を無視して実力主義的であり、公家や天皇といった名ばかりの時の権威を軽んじて嘲笑・反撥し、奢侈で派手な振る舞いや、粋で華美な服装を好む美意識であり、室町時代初期(南北朝時代)に流行し、後の戦国時代における下克上の風潮の萌芽ともなった。
引用元:ばさら - Wikipedia
やたらと戦が強い武士の実力者が奢ってばさら的になることが多く、彼らは一見ただのはねっ返りで派手で風紀を乱す存在でしかないのに強いので誰も文句を言えなかったためか将軍足利尊氏の弟直義が主導して編んだ『建武式目』では明確にばさらを禁じています。観応の擾乱を引き起こした直義の政敵、高師直は佐々木道誉とともにばさら大名の代表格ですから、彼らの動きを意識しての禁止なんでしょう。
ばさら大名佐々木道誉
ばさら大名としては、上記の佐々木道誉(ささき・どうよ)と高師直(こうの・もろなお)、そして土岐頼遠(おき・よりとお)あたりが有名でしょうか。
特に佐々木道誉は戦に強く、文化的教養にもすぐれ、そして風流で「ザ・ばさら大名」と言っていい人物でしょう。
足利尊氏に従ったと思ったら新田義貞に寝返りそのあとまた足利についたり(これはもしかしたら尊氏と示し合わせてたかもしれない)、比叡山の神獣の猿を馬に乗る際の腰当てにしたり(つまり、神獣を尻に敷く)、身勝手で周囲をバカにする言動が目立ちます。目立つというか、それしかやってないという。
そうかと思ったら連歌や茶道、香道や笛などをたしなみ非常に文化的な側面をもち、教養ある人物でもあります。
高師直は天皇家について「王(天皇)だの、院(治天の君)だのは必要なら木彫りや金の像で作り、生きているそれは流してしまえ」とか言ってるし、土岐頼遠は、光厳上皇の牛車に向かって「院と言うか。犬というか。犬ならば射ておけ」とかいって矢を射たとか牛車と倒したとか言われてるし、どうも粗野で強いだけで野蛮な武士ってなもんですけど、佐々木道誉は教養がある分、その言動は粋な感じがします。
佐々木道誉は、実はぼくが日本史上の人物で一番好きな人物です。とにかく実力をともなったばさらっぷりがカッコいいんですよねぇ。
『戦国BASARA』という表記の違和感
ところで。「ばさら」というのは南北朝時代の風潮で、以後の時代にはまったくと言っていいほど引き継がれていきません。まさに流行語といったカンジです。ですから、戦国時代に突入すると「ばさら」という言葉は本当に記録から消えています。
似た意味の言葉としては「傾奇」とか「伊達」のニュアンスが近いんでしょうけど、「ばさら」の持つ意味よりは少し規模が小さいイメージがします。
そうなってくると、気になるのが『戦国BASARA』という表記ですよね。「戦国」と「ばさら」がくっつくなんてありえないんですよ。これは『戦国大名の正体 家中粛清と権威志向』という本の中で著者の鍛代敏夫さんも明確に誤りだ、と言っています。
まぁ、ゲームのタイトルなのでインパクトやイメージ、語呂の良さなんてのが優先されるんでしょうから、仕方がないところで目くじらをたてるところではないんですけど、ばさら好きとしてはちょっと気になってしまいますね。
最後に
なんてことは考えずに『戦国BASARA』を楽しまれるのは癪なので、ばさら好きとして書いてみました。
あんまりテストに出るような言葉じゃないし、知らなくてもいいことではあるんですけど、知ってるとただただ面白いよねぇ。