いやもう連日クソ暑い。もう思いっきり夏ですよね。そして夏と言えば怪談だったりします。怪談と言えば幽霊。これはもう幽霊。
幽霊といえばイメージとしてはこんなカンジじゃないですか。
白装束で、なんか頭に三角の布つけてるの。はいはい、うらめしやうらめしや。
ああこわい。しかし、その頭は何やねん。その三角の布は?
一体、この三角の布は何なのか。何ていう名前なのか。
死装束の頭のパーツ
この三角の布は「天冠」といいます。読みは「てんかん」または「てんがん」。地域や宗旨によっては「髪隠し」とかいったり「額烏帽子(ひたいえぼし)」といったりするそうですが、基本的には「天冠」です。
で、この「天冠」が一体なんなのかと言うと、これはいわゆる死装束の一部です。
死装束とは
死装束とは、死んだ人があの世に行くときに着る衣装のことです。
経帷子(きょうかたびら)という白い着物を着て、手には手甲、脚には脚絆、そして頭には頭陀袋(ずだぶくろ)。頭陀袋の中には三途の川の渡り賃である六文銭。そして網笠をかぶって草履を履いて。
どっちかというと山伏みたいな衣装と言っていいかも知れない。
で、仕上げに(かどうか知りませんが)頭に天冠をつけるんですね。
死装束がすべて白色なのは、死者をことさら清浄な状態にみせるためです。
とにかく、これが死者の衣装ということになりますから、死んだ人がこの世に未練を残して幽霊になったりするとどうしても「頭には天冠がついている」という状態になりがちです。
つまり、ドリフのコントで志村けんが幽霊をやるときの衣装、あの感じです。
死者に「天冠」をつけるわけ
しかし、わざわざあんな三角の布を頭につけるのは何でなんでしょうか。失礼ですけど、ずっと見てたら笑いを誘うような布を何でつけるのか。
これはどうやら中国からきた発想のようです。
(昔の)中国では、中華の人たちは冠をつけ、それ以外の野蛮人は冠をつけてません。冠がないと野蛮人とみなされるわけです。
死んで閻魔庁に入ったときに、ちゃんと冠をつけておけば閻魔大王も「お、お前ちゃんとしてるやん」と思い地獄行きは免れると考えられていたようですね。逆に冠をつけてないと閻魔大王に失礼=地獄に落とされる。だから、天冠をつけるわけです。閻魔大王に対する礼ですね。
まぁこれは仏教の思想であって、諸説はありますけど。「身分の高さをあらわす」とか。
「あー、閻魔くん、ワシはエライんだから地獄に落としたらだめじゃぞ。そんなことしたらみんなが黙ってないぞ。言うてもお主なぞ地獄の門番であろう。そんな輩がワシを裁くなぞ笑止千万」
みたいなこと言ってたら地獄に落とされそうですけどね。
最後に
つまりは、死者の頭に天冠をつけるのは「この世に遺された者たちが死者に対して最後にしてやれること」なんでしょうね。
人間、生きてる間にアカンことのひとつやふたつは犯しちゃいますが、それでも閻魔大王へ失礼のないようにして地獄行きにならないように、という願いであり、最後の抵抗なのです。
しかし、地域や宗旨によっては故人じゃなくて遺族が天冠をつけることがあったりして(ぼくもつけたことがあったりする)、なんだかややこしい。
また、最近の幽霊のトレンドは長い黒髪の女性ということに貞子のせいでなっちゃってるので若い人なんかはこの記事自体がピンとこないかもしれませんが、まぁそれはそれ、ということで。