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『ピンポン』の風間で泣いた


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先日休みの日の昼間に、NHKのBS2で『ピンポン』をやってたのです。

もともと原作の漫画が好きで、ていうか松本大洋先生の作品は全部好きで、その映像化ということで「どうせダメだろ」と思いながら映画みて「スゲェ!」となったクチなので、『ピンポン』は大好きな映画なのです。

ところが、ですよ。

この卓球をめぐる青春群像を観て、ぼくは不覚にも涙を流してしまった。しかも、風間を見て。映画では中村獅童さんが演じてますが。

今まではそんなことなかったのに。

『ピンポン』とは

ぼくが見た『ピンポン』は2002年に公開されたやつです。監督は曽利文彦さんで、主演は窪塚洋介さん。神奈川県藤沢市を舞台に、卓球に魅了された高校生の青春を描いています。 

ピンポン

ピンポン

  • 窪塚洋介
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もともとは松本大洋による漫画で、『ビッグコミックスピリッツ』に1996年から1997年に連載されました。

松本大洋の漫画についてぼくは昔っから思ってるんですが、どうも漫画で映画を再現したいと試行錯誤してるような気がしていて、だからこそ『ピンポン』映画化の話を聞いたときは「ほほぅ」と思ったのです。で、見てみたら原作の漫画的アクションが完全にそのまんま再現されていて「うわぁスゴい!曽利監督スゴい!」と圧倒され、『ピンポン』はぼくの大好きな映画になりました。松本大洋先生の試行錯誤をわかってるかのような映像化、と思ったのです。

まだ見たことない人は原作読んでから見ると余計「うわぁスゴい!」とかなれると思うので、ぜひ原作を読んでから観てみてください。面白いです。あ、あと2014年にアニメ化もされたのでそちらもどうぞ!

『ピンポン』の風間

さて、この『ピンポン』に風間竜一という人物が出てきます。ニックネームはドラゴン、映画で演じるは中村獅童。

卓球は主人公星野(ペコ、窪塚洋介)と月本(スマイル、ARATA)よりも強く、2年連続インターハイ個人優勝するほどの腕前ですが、かなりストイックに卓球と向き合い、無敗のプレッシャーに苦しんで試合前はトイレに籠る繊細な一面も持つ選手です。

とにかく作品中では主人公ペコとスマイルの前に立ちふさがる壁として登場し、3年最後の大会で挫折から復活したペコとの準決勝での対決が『ピンポン』のクライマックスとなっています。

決勝がクライマックスじゃないところがこの作品のキモで、決勝は幼馴染どうしのペコとスマイルの対決なんですがあえてそれは描かれず、表彰台でペコが1位となってる写真が描かれて結果がわかるようになっています。

そして、卒業後のペコとスマイルとドラゴンの姿がエピローグとなっているところが、たまらなくイイんですよね。

とにかく風間竜一(ドラゴン)は『ピンポン』における主要人物のひとりです。

『ピンポン』の風間で泣いた

で、冒頭に書いたように、ぼくは映画でこの風間を見て泣いたのです。今までそんなことなかったのに。困ったもんです。

一体、風間のどこを見て泣いたのか。

解放される風間

卓球に対して「勝たなければならない。勝たなければ意味がない」と思っている完全王者の風間にとって、卓球はきっと苦痛でしかありません。だからこそ、試合前にはひとりになるためにトイレにこもり、そのプレッシャーと戦っていたのです。

そして物語のクライマックス、ペコとの準決勝。

スマイルとの才能の差に絶望して挫折したものの復活してきたペコを最初こそ圧倒したものの、その風間の強さでさえ克服したペコに次第に押され始め、風間と同じ高校の選手は焦りだします。「キャプテン前に出ろ!前に出ろ!」と部員が声を出したとき、ラリーを続けている風間は叫びます。

「ゴチャゴチャうるせえ黙ってろ!」

そのときの顔が、笑っているのです。今まで練習や試合で一度も笑ったことのない風間の顔が。

才能を覚醒させた天才ペコと対戦していて、今までテッペンだと思っていた自分の立ち位置よりもさらに上があったと気づき、笑ったのでしょう。つまりこれは、チャンピオンとしてしか居場所がなかった世界にまだ上があった、自分はまたチャレンジャーになれる、という喜びでしょう。

王者にしかわからない孤独な苦痛からの解放、これに風間は喜びを感じ、笑ったんだと思います。

『ZERO』の五島と『ピンポン』の風間

ここでちょっと脱線しますが、松本大洋の漫画に『ZERO』があります。松本作品の中でぼくが一番すきなやつですが、この主人公が五島雅というボクサー。

この五島がめちゃめちゃ強い。無敵。そして、常にチャンピオンであり続けるプレッシャーに押しつぶされそうになっている。トラビスという、自分の持っている“狂気”と同じものを持っているボクサーに試合で全てを伝授して引退しようとするんですが、その試合にも勝ってしまう。そして『ZERO』は、「まだ解放されない」という絶望に泣いて咆哮する五島の姿で終わります。

おそらく、この五島と風間は同じ人間です。そして、この絶望を解放するにはどのようなキャラクタが必要か、と考えたときに生まれたのがペコなのではないか。そのペコを風間より上に飛ばせるために必要だったのがスマイルと佐久間(アクマ、大倉孝二)と孔(チャイナ、サム・リー)だったんじゃないか、とかぼくは勝手に考えています。

『ZERO』の精神的続編が『ピンポン』?みたいな。『ZERO』は「強すぎる男の悲劇」がテーマで、『ピンポン』はそれの解消がテーマ。むしろ風間が主人公なのではないでしょうか。

解放される風間に涙するぼく

で、ぼくは解放されて笑った風間を見て、泣いたんです。涙が流れた。

「うそーん」て感じです。今まで漫画も幾度となく読み、映画も何回も何回も観て、そんなこと一度もなかったのに。

いつものように「ただ単にオッサンになったからか」と思ったんですが、それはちょっと違うような気がします。そうであれば、ぼくの涙は弱者にこそ流されます。頑張ってる子供見たりとかしたときに。今回は強者を見てますからね。強者が弱者に転換したからなんでしょうか。そこはわかりませんが。

とにかく、風間に対し「今まで本当によく頑張ったな。これからはもうちょっと楽になっていいんだぞ」と思ったんですよね。もしかしたら、ウチの息子たちが高校生という時代を通り過ぎたからなのかもしれません。彼らも高校時代はいろいろ頑張った。自分がまったく頑張らなかった人間だったので、その頑張りには尊敬すらしてます、マジで。

そして、息子たちの最後の試合とかは、やっぱり見てて涙が出ましたからね、見せてないから誰も知らないけど。それもやっぱり、その頑張りからの解放に涙したような気がします。つまり、風間の姿に涙したのも、親目線。涙腺が緩くなると同時に子供が成長するので、親になるとこういうことになりがち。

前回見たのは長男が高校生になる前でした。そうか、だから今回が初ピンポン涙なんだ。と妙に納得。

押し入れの中から漫画も引っ張り出してきて、絵でも泣くか試してみようかしら。

最後に

というわけで、オッサンが泣いた理由を自分で探る、というなかなかキツい記事ですが、いかがです?

あ、ここに描かれている作品の解釈はぼくが勝手にしたものなので悪しからず。松本大洋先生に「勝手なこと言うな」とか怒られるかもしれないくらい勝手です。

まぁ、みなさん各々自分で見て考えてもらえればいいじゃないかな。もちろん、そんなゴチャゴチャ考えなくても十分に面白いんですけどね!