長岡藩の河井継之助を描いた司馬遼太郎の小説『峠』が映画化だそうです。ちなみにこの作品の映像化は初。
公開は2020年とのこと。
司馬遼太郎氏の名著「峠」初映像化 主演は役所広司 - シネマ : 日刊スポーツ
司馬遼太郎『峠』映画化
『峠』とは
司馬遼太郎の『峠』は、越後長岡藩の河井継之助を題材とした小説です。
継之助は、幕末の越後長岡藩で家老にまで昇りつめ、戊辰戦争時には幕府新政府どちらにも属さないことを目指し徹底抗戦し、おそらく長岡藩の独立すら目指していた人物です。どちらかというとマイナーであり、『峠』がなければ全国的な知名度は全然なかったかもしれない人物ですよね。
そんな河井継之助の生涯を(といっても30過ぎてからですけど。遅咲き継之助)興味深く描き切った小説、それが『峠』なんです。
「米百俵」でおなじみの小林虎三郎も出てくるし、面白いよ!
『峠』映画化
そんな『峠』が映画となるそうです。
継之助を演じるのは役所広司さん。脇を固めるのは松たか子さん、仲代達矢さん、他にも東出昌大さんや吉岡秀隆さんなど、そうそうたるメンバーです。
そして、黒澤明監督に師事し、黒澤監督の遺作シナリオ『雨あがる』を撮った小泉尭史さんが監督と脚本を務めるそうで、この点は期待したいですね。
さて、やっぱり気になるのは継之助をどのように描くのか、ということ。
継之助は、ひょうひょうとした部屋住みなのに藩から頼られ家老にまで駆け上ってあろうことが中立を目指すという、ちょっと一筋縄ではいかない人物ですから。まぁ、役所さんならウマくやるんでしょうか。
長岡の人たちは河井継之助を許したのか
この『峠』の映画化について、ぼくはちょっと気になることがありまして。
それが「長岡の人たちは河井継之助を許したのか」ということ。というのは、河井継之助は、長岡の人たちに恨まれていた部分もあるからです。
すさまじかった北越戦争
幕末、鳥羽伏見の戦いに勝利した新政府軍は、東海道と東山道と北陸道にわかれて東に進軍していきました。おそらく各藩を新政府になびかせつつ進軍し、会津で合流して事実上の最終決戦をすることを新政府は考えていたはずです。そして、北陸道を進む新政府軍には、河井継之助を中心に中立を目指して武装も整えていた長岡藩は異様に映ったことでしょう。
その後、小千谷での談判で新政府側は継之助の嘆願を一蹴し、越後長岡は仕方なく奥羽列藩同盟に加盟し(奥羽越列藩同盟)、新政府と戦うことになり、継之助の指揮する長岡藩は徹底的に抗戦、長岡は戦禍を被ることになります。多くの犠牲者が出て城下も焼け、長岡の被害は甚大でした。
結果的に長岡藩は、天の時を得ている新政府軍には負けてしまうことになります。
長岡の人々の恨み
このときのことを、多くの犠牲を出した長岡の人たちは継之助を恨んでいたときいたことがあります。
だって、継之助がアホみたいなことをいって徹底抗戦したためにエラい目にあった、というのが市民の率直な感想でしょう。新政府の世になったとしても、一般の人々にとっては税を獲っていくアタマがかわるだけですから当然といえば当然です。それなのに、武士のメンツだか何だか知らんけども、継之助のせいで親が死んだ子が死んだ家が焼けた、とあっては恨まれても当然です。
その恨みのせいで継之助のお墓は何度か打ち壊されたりもしたそうですよ。
もう恨んでない?
そんなワケで、今までいくつもの司馬作品が映像化されているのに『峠』だけが映像化されなかったのは、長岡の人たちの感情が妨げになったということもまことしやかに言われていました。
しかし、戊辰戦争も過去のこと。そういった感情を抱いていた人たちももうこの世になく、恨みもなくなっているのかもしれません。
うちの職場に長岡出身の若いやつがいるんですけど、実際にその辺のことを聞いてみたんですが、帰ってきた答えは「継之助って誰スか?」というものでした。
まぁ、そんなもんかも知れませんね。
最後に
ともあれ、『峠』映画化です。
ぼくは、若いころに『峠』を読んだこともあって河井継之助という男の大ファンなので、楽しみに公開を待つことにします。