Amazonプライムビデオにて、ずっと観たかった映画『ウィズネイルと僕』が見放題になってました。
喜び勇んで観たぼくですが、見終わったあとズーンと沈んでしまいましたよ。
ああ、観るんじゃなかった……。
映画『ウィズネイルと僕』
『ウィズネイルと僕』は1987年制作のイギリス映画です。ブルース・ロビンソンの初監督作品で、彼の半自伝的作品ですね。
1960年代のイギリスの世に拗ねた若者をひたすら観賞するといった趣の映画で、物語のアップダウンも全然激しくなく、彼らの退廃的な生活だけを切り抜いたカンジです。
そういった背景があるからか、ザ・ビートルズのジョージ・ハリスンもプロデューサーとして名を連ねています。
1960年代後半のロンドン。売れない役者の僕は、同じ境遇のウィズネイルと貧乏暮しをともにし、酒やドラッグをあおりながら語り合う日々を送っていた。そんな毎日に嫌気がさした僕は、ウィズネイルの叔父モンティが所有している田舎のコテージで素敵な休日を過ごそうと目論むが……。
日本では1991年に吉祥寺のバウスシアターで限定的に公開されたのみだったので、ぼくにとっては観ようにも観られなかった作品です(のちにDVDにもなりましたが)。
『ウィズネイルと僕』と『山月記』
というわけで初めて見ることができた『ウィズネイルと僕』ですが、最初こそ青すぎる若者がひたすら酒をあおってドラッグやタバコを吸いまくり何の生産性のない会話をしているのを楽しんでいました。
人間若いウチはこうだよなぁぼくもそうだったさ、みたいな。
しかし、だんだんとぼくは全然関係ないのに焦ってきちゃいました。
お前らいつまでそうやねん、そのままだとヤバいで。現実を見て動けバカ。
そうなんですよね、ぼくら普通のオッサンはみな若いころこんなだったのです。そしてそのまま努力も何もせず大人になって後悔して生きている…。
あれ?この感覚、前にもなかった?前にも書かなかった?と思ったらこれでした。
そうです、この映画の主人公たるウィズネイルと僕は、そのまんま若いときの『山月記』の李徴(りちょう)なのです。そして、ぼくらくたびれたオッサン。彼らは、ぼくらの若いころの姿なのです。
ああ、なんて残酷な!今さらこんな姿を見せなくたっていいじゃないか!
しかも最後、「僕」は主役の座をゲットしウィズネイルの元を離れます。そして、ぼくらはもちろんウィズネイル側です。「僕」の人生はこの先輝かしいものになるでしょう。しかしウィズネイルのそれは…一体どうなる?
そんなのぼくは知っている。何者でもないオッサン、社会に居場所のない、それどころか邪魔なオッサン…。しかしこの映画はウィズネイルを責めもせず残酷な未来を描いたりもしません。
何て残酷な映画だ…と思いつつ、こうやって肯定も否定もしないでいてくれるのはありがたいですね。虎となって薮の中でヒッソリと生きている身としては。
というわけで、何者にもなれなかったオッサンは『ウィズネイルと僕』に心を沈められつつ心地良い感覚に包まれているわけであります。
最後に
まぁ若者は、反面教師として『ウィズネイルと僕』を観るのもいいかもしれません。そしてこんな生き方しとったらこうなるよ、という『山月記』を続けて読むといいでしょう。
すべての若者の人生に栄光あれ!ぼくは間に合わんかったけど!みたいな。
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