1932年8月6日、イギリス、ブライトンで殺人事件が起こった。ブライトンに興行にきているサーカス団のピエロのシャルル・デュボワがシャワーワゴンで殺されたのだ。死因は背中から心臓に達するナイフの一突き。シャワーが出しっぱなしで血液はほとんど流されていた。私はこの事件を任されたミントン警部である。
というわけで、レトロアドベンチャーゲーム『道化師殺人事件』の話。
『道化師殺人事件』って?
『道化師殺人事件』は、1985年に発売された傑作推理アドベンチャーゲームで、プレイヤーはロンドン警視庁から派遣されたミントン警部として殺人事件の解明に走り回ることになります。
とにかくストーリーが秀逸で、二転三転して最後は意外などんでん返しが待っています。
発売したシンキングラビットは『鍵穴殺人事件』、それに続くこの『道化師殺人事件』で推理アドベンチャーといったらココ!という地位を築きました。
美しいグラフィックとスクロールが素晴らしい
この『道化師殺人事件』、グラフィックが当時としては小さいながらもキレイでした。基本的に自分目線の絵で、なかなか臨場感があります。
そして移動のときにさらに臨場感は増します。前に進むときは内側から外側にワッと次の絵が出るし、逆に後ろへ行くときは外から中心に向かって次の絵が出る(意味わかる?)。そういった工夫によってなんだか本当に歩いてる気分になりました。そして横に移動するときは何と横にグラフィックがスクロールしていったんです。これには当時ビックリしました。
でも要するに、常に前を見ながら前後左右に移動するミントン警部w
圧倒的に多いリアクションが素晴らしい
当時のアドベンチャーゲームはコマンド入力方式ってやつで、コマンドを名詞+動詞で入力するわけですが、それはこの『道化師殺人事件』も同じ。しかし、そのリアクションは他のゲームの追随を許さないほど多かったのが素晴らしい。
プレイヤーが自由にコマンドを入力するわけですが、その反応は当時そっけないものが多かったです。「ソレハデキマセン」「ナンデスカ?」答え以外を入力するとそんな返事が返ってくるのが当然でした。
ところが『道化師殺人事件』は違いました。語彙がかなり多い!適当なことを入力しても何らかの反応が返ってきました。例えばこんなカンジ。
「ウタ ウタウ」と入力すると「陽気だね。」と返ってきてます。他にも「歌なんか歌って、なにかいいことでもあったんですか?」とか返ってきたりもしました。一体お前は誰なんだw
キスをして事件は迷宮入り
さて、ここからが本番。長い前置きスミマセン。あまりにもいいゲームなもので。
これを遊んでいた当時、ぼくは中学2年生でした。自分が刑事になって事件を解決する推理アドベンチャーは絶対に体験できないことでしたから、もうミントン警部になりきってプレイしていましたね。何を入力しても色々反応の返ってくるので楽しかったですし。
で。
ぼくは当時中学生、いろんなアダルティなコトが頭を駆け巡るお年頃。フトひらめいて試しに町のオッサンに「キス スル」と入力してみました。おねーさんにするのはいくらゲームの中でも躊躇われたウブな男の子であるぼくは、まずオッサンで試そうと思ったんです。そしたら「あんた、どういうつもりだ?」という返事が返ってきました。
何と?「キス スル」にもちゃんと反応がある!
超興奮したぼくは、よーし!と意気込んでおねーさんが住む家へ向かいました。ドアをノックして出てきたおねーさんに「キス スル」。
………めっちゃ怒られた。
その後も町中をキスして回ったんですが、みんなカンカンに怒って聞き込みをしても誰も何も教えてくれなくなりました。町中の人にキスをせがむ刑事になんか誰も協力しないのです。
おかげでゲーム続行不可能になり、事件は迷宮入りですよ!なんてこった!
最後に
そんな推理アドベンチャーなのに自由度が高い『道化師殺人事件』は、あまりにも素晴らしいゲームだということで発売から10数年後にリメイクもされましたし、プレイステーション、セガサターンにも移植されましたね。
それらはコマンド選択方式になってしまっていて、当然「キスする」なんてコマンドは用意されていないので『道化師殺人事件』っぽさがなくなってしまっています。残念。
でもシナリオが面白いのは確定ですから、みなさんも機会があればプレイしてみてください。
キスできないけど。