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「愛読書は司馬遼太郎です」という経営者が頭良さそうに見えない

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企業の経営者さんへ「愛読書は何ですか?」と尋ねたら、「司馬遼太郎の小説です」と答える人は多いです。

過去に経営者にアンケートをとったこんな記事もありました。3年も前の記事ですけど(リンク先はもう概要のみになってますが)。

この記事によると、実に4人に1人が「シバリョウタロウノショウセツデス」と答えたそうです。

それってどうなの?って思っちゃうんですよね、なんか。

素晴らしい司馬作品

ぼくは日本史が好きです。そして、好きになったキッカケとなったのが歴史シミュレーションゲーム『信長の野望』と司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』です。『信長の野望』シリーズはもれなく遊び倒していますし、司馬作品はもれなく読み倒しました。

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司馬遼太郎の作品は素晴らしい。

膨大な史料に裏付けされたその作品は、最高のエンターテインメントのひとつだと思います。

多くの経営者さんが好んでいるという『坂の上の雲』も、当時の熱気、そして時代の明るさと悲壮さが行間からほとばしり、史料としても機能するんじゃないの、というレベルです。

そして、史料に裏付けされた確かな歴史観は、「司馬史観」とも呼ばれ、あたかもそれが真実のように語られることもあります。

司馬遼太郎を読んで歴史を知った気になってた

ぼくも若いころは“司馬作品=歴史そのもの”だと思ってました。さながら、「司馬史観」の信者です。それが歴史のすべてでした。

そうすると、司馬遼太郎の作品で歴史を語ったりするんです。

今考えると恥ずかしい。

何故なら、「司馬史観」はあくまでも司馬遼太郎個人の歴史の見方であって、歴史学とはまったく違うからです。

『竜馬がゆく』の主人公は坂本馬であって、坂本馬ではないんです。

その辺わかってる?

愛読書として挙げられている『坂の上の雲』を例にするとわかりやすい。

司馬遼太郎は、明治時代に関しては徹底的にその明るさにスポットを当てています(明治時代に限らず、どの時代を書くにしても、前向きな明るさをメインにしていますが)。そしてそれは決して嘘ではありません。

しかし、明治時代の日本は本当に休む間もなく、先行きもわからないまま疾走し続け、不安の中かなり疲弊していた側面もあるのです。

どうも「司馬遼太郎好き好きー!」と言ってる人はその辺がわかってる人が少ないように見えます。かつてのぼくのように、単なる「司馬史観」の信者にしか見えないのです。

ちなみに小泉純一郎元首相は司馬遼太郎好きを公言していますが、わかってる感があります。とある講演で言ったそうです。

私は明治時代に生きていた国民は非常につらい体験をしていたと思う。なぜなら、明治は戦争、戦争の連続の時代でしたから。まず幕末の戊辰戦争、同じ国の人間が殺し合いをやったんですよ。そして、明治政府ができたと思ったら、明治10年には西南戦争です。(中略)この時代に生きた人は本当に苦労が多かった。社会保障も年金制度も医療保険も介護保険も何にもない時代で、日本は戦争に勝ったけれども、国民は大変な苦労をした。

引用元:自分の言った言葉を守るかどうか。政治家は常にそこを問われている【3】|メンズファッション、時計、高級車、男のための最新情報|GQ JAPAN

あくまでも小説として読んでよ

「『坂の上の雲』が好きです。読んだら軍事とビジネスは似ているということがわかるんです(キリッ」とか言う人はその辺わかってるのかなーと考えちゃいます。

もちろん、そう言っている人でも、ひとつの組織を経営して成功しているひとたちですからちゃんと分かってるんでしょうね。

ただ、なぜ愛読しているのか理由を問われたときに、上記のような答えだと「何も考えずに小説を史実だと信じちゃってるよ。頭わりぃ」とか人から思われちゃうから気を付けたほうがいいよ、と老婆心ながら思うわけです。

いや、わからなくはないんだけど。